2018年 10月 23日
10月17日(水)、晴れ。 壱岐島。壱岐島芦辺港近くの宿を出発し、壱岐島中央部の台地に点在する古墳探訪へ向かう。 県道172号線を西へ走ると直ぐに急坂となる。 急坂をひいこら言いながら上る。 ほぼ坂道を上り切ったところで、月読神社に石段下から参拝。 古墳探訪の起点目印の壱岐国分郵便局前に至る。 いよいよ、古墳探訪となるところながら、その前に、郵便局の向かいの、國片主神社に参拝、その隣の「顎掛け石と六面十二菩薩」、「へそ石」を見学、そして、國片主神社裏の、壱岐国分寺跡を探訪。 前話でここまでのことを綴った。 いよいよ、古墳探訪となる。 先ず、鬼の窟古墳へと向かう。 台地上では多少のアップダウンはあるものの、ほぼ平坦。 県道の名称は国分郵便局のところで172号線は174号線に変わり、県道174号線を西へしばらく走ると右手に鬼の窟古墳が見えて来た。 鬼の窟古墳。 鬼の窟古墳の入口近くで、壱岐島の古墳全般に関わる「史跡 壱岐古墳群」に目を通す。 --------------------------------- 国史跡 壱岐古墳群 長崎県壱岐市芦辺町・勝本町 (国分・亀石地区一帯) 壱岐島内には、長崎県全体の6割にあたる290基の古墳があり、そのうち200基以上の古墳は6世紀後半から7世紀前半(今から約1400年前)にかけて築造されています。 中でも、双六古墳、笹塚古墳、兵瀬古墳、鬼の窟古墳、対馬塚古墳、掛木古墳の6基の首長墓が「壱岐古墳群」として国の史跡に指定されています。 6基の首長墓の石室内からは、中国大陸や朝鮮半島の国々から認められていたことを物語る遺物が多数発見されており、海外の国々に精通した有力者が島内に存在していたことを窺い知ることができます。 ----------------------------------- 「壱岐古墳群」として国の指定である6首長墓の玄室。 上段/左から、掛木古墳、鬼の窟古墳、笹塚古墳。 下段/から、双六古墳、兵瀬古墳、対馬塚古墳。 盟友、備前守さんから頂戴したマップ「古墳群散策」を参考にしてプランした”計画書”では、6首長墓のひとつ、対馬塚古墳は入っていなかったので、探訪先に対馬塚古墳を追加。 因みに、今回、探訪を定している古墳と順路は次の通り(一部、追加と未達を加味)。 10月17日: 鬼の窟古墳 ~双六古墳(前方後円墳) ~掛木古墳(円墳) ~壱岐風土記の丘/古墳館 ~百合畑古墳群(前方後円墳4基、円墳19基) ~笹塚古墳(円墳) ~対馬塚古墳(前方後円墳)・・・追加 ~釜蓋古墳古墳群(円墳7基)・・・未達 ~百田頭古墳群(円墳8基)・・・未達 ~兵瀬古墳(円墳) ~カジヤバ古墳(円墳)・・・追加 ~平原1号墳(円墳)・・・未達(但し、あの辺りであろうという森を視認) 10月18日: 大塚山古墳(円墳) CGで描かれた馬上の首長。 首長の案内で、いざ、壱岐古墳群探訪に出発! 鬼の窟古墳。 石室入口脇の説明板に目を通す。 --------------------------------------- 長崎県指定遺跡 鬼の窟古墳(おにのいわやこふん) 昭和36年(1961年)11月24日指定 所在地:長崎県壱岐市芦辺町国分本村蝕字磐屋森1206の1番地 指定面積:1,577平方m2 古墳とは、古墳時代(およそ3世紀後半~7世紀頃)に造営された小高い墳丘を持った墓のことである。 基本的な形態は円墳・方墳・前方後円墳などがあるが、鬼の窟古墳は、墳丘の直径が45m、高さが13.5mの県内最大級の円墳である。 調査によって、出土した遺物の製作年代と石室構造および形態的な特徴から、本古墳は6世紀末に築造され、その後、7世紀後半まで追葬が行われたと考えられる。 遺骸を埋葬するための石室は、羨道部から中へ入り、前室・中室を経て主な埋葬空間である玄室へと至る三室構造の両袖式横穴式石室であり、石室を巨大な玄武岩で積み重ねて築き上げていることから、「巨石墳」と呼ばれることもある。 石室は全長16.5mで、玄室の平面系は一辺約3mの正方形に近く、床面から天井までの高さは3.3mである。 中室の規模は長さ3m、幅2.5m、高さ1.9m、全室の規模は長さ3m、浜2.5m、高さ1.9mである。 玄室が平面方形で、6世紀後半にちくぞうされた対馬塚古墳・双六古墳と比べると天井が低く、前室と中室の天井石の高さが揃っている点などが特徴である。 平成元年度に、崩壊した石室入口側壁と天井石の修復に際して発掘調査が実施されたが、石室からの出土遺物は須恵器(蓋坏(ふたつき)・𤭯(はそう)、壺)や韓国の新羅土器など少数であった。 この古墳の存在については古くから知られており、江戸時代、文久元年(1861年)に編纂された『壱岐名勝図誌』には、鬼の窟古墳について「笹窟(ささくつ) 巳午(みうま)向矢櫃鬼屋(やひつおにや)ともいう。大路より二十三間計(はかり)にあり。...件(くだん)の窟、国人はさらなり、諸国の客人見に来る所にして、石面に落書き多し。」とあり、その当時から各地より見物客がたくさん訪れて落書きが多かったことが記載されている。 壱岐島では現在260基ほどの古墳が確認されているが、それらの古墳のほとんどは6世紀後半以降に築造されたもので、6世紀以降になると古墳の数が激増するという現象が認められる。 本古墳もそのような古墳のひとつであり、その規模の大きさから壱岐を治めた当時の有力者が埋葬されているものと考えられる。 平成20年3月 長崎県教育委員会 壱岐市教育委員会 ---------------------------------------- 入口(開口部)の立派な立柱石。 その立派さを捉えるため、角度を変えて、立柱石を撮ってみた。 石室に入ってみようと思うのだが、羨道部と中室の間に大きな石が横たわっている(閉塞石の片割れであろうか?羨門ではないから、閉塞石ではないように思えるが)。 羨道部と中室の間に、上部は開いているものの大きな石が横たわっており、石室内には入れないのかな?と一瞬、思ったところに、散歩中の地元のおっちゃんが現れた。 「石を乗り越えれば、中に入れますよ。右側にあるスイッチを押すと照明の明かりが点灯しますよ」と親切なアドバイスあり。 スイッチ・オン。 暖色系の照明が点灯。 大きな石の端っこを乗り越えて石室に入る。 前室から中室を経て、玄室へ。 玄室の入口である玄門の手前に大きな石が倒れている。 玄門には左右に大きな立柱石が立っていたと思われ、左側の立柱石は健在、手前に倒れている石が右側の立柱石と思われる。 玄室/奥壁。 時折見掛けることだが、後の時代に置かれたであろう小さなな石仏が鎮座している。 玄室/右奥角。 玄室/天井。 石室内から入口方向を眺めるの図。 羨門に横たわる大きな石を乗り越えようとする武衛さんの影と共に。 大きな石を乗り越えて外に出た武衛さんの影が見える。石室に入ることは許されていない古墳も多いので、ここで石室に入ることが出来たのは誠に有難いことである。 古墳探訪の際には、石室に加え、墳丘に上ることも常としている(もちろん、禁止されていないということが大前提であるが)。 鬼の窟古墳の墳丘を眺めると、踏み分け道のようなものはなく、墳丘に上ることは憚られる雰囲気であったので、上ることは止めた。 で、墳丘の裾あたりに葺石の形跡がないか見分。 葺石らしき石が散見される。 説明板では葺石については触れられておらず、葺石が施されていたか否かは不明なるも、葺石らしき石は葺石と思いたい。 鬼の窟古墳/測量図(出典:古墳館展示パネル)。 鬼の窟古墳/石室展開図(出典:古墳館展示パネル)。 壱岐島の古墳探訪の初っ端から誠に結構なものを見せて貰った。 巨石で築かれた石室としては、石室が露出して、その全貌が目の当たりに出来る、明日香の「石舞台」が有名である。 だが、古墳探訪を始めた頃に訪ねた観音塚古墳(群馬県高崎市)の石室に入ったとき、これは中央の「石舞台」と肩を並べるくらいの規模の巨石の遺物であると驚いた記憶がある。 中央から遠く離れた上野国にも巨石を使った石室築造の技術が伝播しているということに驚いたのである。 そして、今回、鬼の窟古墳の石室に入り、これも中央から遠く離れ、且つ、海で隔てられた離島にも巨石を使った石室を作る技術が伝わっており、それをこの目で見ることが出来、大いに感激した。 鬼の窟古墳をあとにして、次の探訪地、双六古墳へ。 フォト:2018年10月17日 (つづく)
by ryujincho
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